大岡昇平 対談集

大岡昇平 対談集「戦争と文学と」』(昭和47年発行。近所の古本屋で250円で本日購入)

大岡昇平が、野間宏大西巨人など、そうそうたる面々と対談してるが、本書を購入した最大の動機は、司馬遼太郎との対談が載ってて面白そうだったから。

以下、大岡昇平との対談の中において、ひときわ熱く輝いていた(笑)司馬語録のいくつかを掲載。


司馬遼太郎の発言:

「(軍隊で初年兵教育の講義を担当させられた時)徳川家康という名前を聞いたことのあるもの手を挙げてといったら、なんと、五十人のなかでたった一人しかいませんでした。これがつまり庶民であって、それまで、フランス革命を知らなければ生きていけないと思い込んでいた私など、徳川家康を知らずとも悠々と生きている人間というのはいるのだということを知って、たいへんショックでした」


「(太平洋戦争にふれて)戦争というのは、よろしい文明現象だということは別として、それにしても純戦略的にいって、考えられないほど馬鹿げた戦争をしたものですね。そういう意味では、世界歴史のなかでいちばん恥ずかしい戦争ではないでしょうか」


「都会出身の人間には、国家とか、国家の強制力とかがどうもわかりにくいところがある。国家が抽象化されて感じられる。だから私など兵隊にとられるとき、国家がおれという個人にこんなことを命じる権能をだれが考えたのか、馬鹿馬鹿しいようなことですけど、本気で思いましたよ」


「私は初年兵で入って『私なんぞ軍隊にとっては何の役にも立ちませんよ、すぐ将軍にしてくれるならべつだけど』と田舎出の上等兵殿に言いますと、『この野郎まだ軍隊のおそろしさを知らんな』といって死ぬほど殴られました(笑)殴られながら、軍隊のおそろしさがわからなければ軍人になれないんだな、と思いました」


「それにしても、日本の軍隊というのは、すごかった。日本の戦車兵の場合、戦車がやられても、一歩も外に出ちゃいかん、砲兵も砲のそばで死ねということが操典で要求されている。軍隊文章でいうと『愛車ト運命ヲ共ニスベシ』ということになります。漢文調ですから実感につるつるしていますけれど、これが口語ですと『オ前ハ戦車ガ燃エアガッテモ中カラ出テハイケナイ』ということになるわけで」


天皇さんをあのように利用した軍部とか、それに連なっていた連中は、どう考えても歴史的犯罪者というほかないですね」


「どうせ四次防で戦車たくさんつくるつもりだろうけど、戦車というのは絶対に役に立たない。戦場では、ただやられるだけの存在です」


「(自衛隊海外派兵について)内乱ですな、海外派兵や徴兵などといえば内乱はやりますよ、私どもは。(笑)」(大岡昇平「僕もやりますがね」)


……いやあ、司馬さんって、結構過激な人だったんですね。