佐々木昭一郎

昨日は、NHKアーカイブス(埼玉県川口市)の公開ライブラリーに行って、
以前から見たいみたいと思っていた佐々木昭一郎製作のドラマ、


夢の島少女』(昭和49年)


と、



四季・ユートピアノ』(昭和55年)

      
を視聴してきました。(NHKの簡単なアンケートに答えれば無料で見られます)




見終わった後、感動のあまり呆然としました。
すごいショックでした。
こんな衝撃を味わったのは、高校生の時、生まれて初めてタルコフスキー監督の、『ストーカー』を観た時以来十数年ぶりの、大事件でした。
日本にこんな素晴らしい作品を造る映像作家がいたとは。
私の心の中で、『佐々木昭一郎』という名は、タルコフスキーソクーロフと同じぐらいの重要な位置を占めるようになりました。


『四季・ユートピアノ』も、『夢の島少女』も、一歩間違えればその演出の「あざとさ」が鼻につく、ギリギリの所に踏みとどまっていて、
しかしそれがあざとさに転落しないで高度の芸術的緊張感を保ちつつ観る者の心に激しく突き刺さって来て
しまいには恐くなるぐらいの詩的歓喜を惹起するその凄さの秘密は、『音の魔術』にあるのだと思います。
そう、佐々木昭一郎の音の演出は魔術的なまでに観る者を魅了しその作品世界内に誘い込み陶然とさせるのです。
効果音(SE)の演出も見事ですし、それになんといっても音楽の使い方、たとえば、
夢の島少女』でのヨハン・パッヘルベル「カノン」、『四季・ユートピアノ』でのJ.S.バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」、
これらの名曲が挿入されるのですが、その瞬間の背筋がゾクゾクする程の、映像と音楽の融合の美しさといったら。
特に、『夢の島少女』での「カノン」が流れる中盤とラストのシーンなどはもう、個人的には故・タルコフスキー監督やソクーロフ監督に向かって、
「日本にもこんな物凄い才能の持ち主がいるんですよ」
と、思わず伝えたくなる程の激烈な恍惚感に満ちたとてつもない素晴らしさで。


……『四季・ユートピアノ』も傑作ですが、私はどちらかというと、痛いぐらいソリッドな作風の『夢の島少女』の方がより好きです。


夢の島少女』の主題の、「夢」「存在論的不安」「東京湾埋立地」……あれ、これどっかで観たようなという既視感を覚えましたが、
そう、これって押井守の『紅い眼鏡』とまったくそっくりだということに気がつきました、鑑賞し終わってから。
でも、観る者を無理やりねじ伏せる芸術的圧倒力という点では、『夢の島少女』の方が『紅い眼鏡』のはるか上をいっていますが――。






ともかく、私は、この日記を読んでくださっている方に、これだけは伝えたい。


「『四季・ユートピアノ』と『夢の島少女』を観ないで死ぬなんて、あなたの人生、大損をしてますよ」


と。
余計なお世話だとは、思いますが……。