あなたの遺産

あのあびゅうきょの新刊コミックスが二月末に出るそうです。(正確には絶版本の復刊。作者の12月27日の日記を参照して下さい)

いやあ、わたし、あびゅうきょのファンなんですよ。小学生の時から。

昔うちの姉が『プチ・アップルパイ』というロリコンマンガ雑誌大塚英志が編集やってた。んで、まだ有名になる前の永野のりこ星里もちるあさりよしとおとかが連載してた)
を購入してて、小学生のオレもそれを読んでたのだが、その中で特に好きだった作家があびゅうきょだった。
それ以降、コンバットコミック、アワーズライト、コミックバーズ同人活動等と、あびゅうきょを追いかけてきて今に至る。

で、今回復刊される『彼女たちのカンプグルッペ』、オリジナルの単行本(1987年3月5日発行)を持っているが、また新たな形で出版されるのは嬉しい。
傑作ぞろいの作品集なので、これを機会に多くの人に読んでもらえたらいいなあと、いちファンとして思う。

『彼女たちのカンプグルッペ』、どのような作品集かというと、この単行本の表紙のコピーがひとことで的確に言いあらわしている。
いわく、

 ――「『少女たちの軍隊』を主題とする8つの物語」――


その収録作品の簡単なあらすじと、作中の少女たちがつぶやく魅力的なセリフを、下に書き上げます。


「あなたの遺産」
(1937年夏、日本帝国海軍はきたるべき大戦にそなえ、今まで銃後の存在にすぎなかった女学生からも兵力を求め、エリート女学生からなる「帝国女子兵学校」を創設した。そうして、敗色濃い戦争の末期。彼女たちに卒業式の日がやってきた…………「死にはしません ええ死にませんとも」


「木漏れ日を抜けて」
ドイツ第三帝国は連合軍に無条件降伏し、戦争は終結した。しかし、東部戦線にいた女子ユーゲント師団の少女たちは、赤軍に降伏する意志など一片もなかった…………「国が負けるって哀れなもんだ これが国家社会主義の目指した結果かい」


「あの子の空」
(東京から疎開した大本営天皇がいる松代に、第三の原子爆弾を投下するためにテニアンから出撃したB29の三機編隊。そのうちの一機、先行天候偵察機に搭乗していた女性士官キャシーは、かつて子供の頃に日本で暮らした経験があった。その時、彼女は一人の日本人少女と友達になり、再会の約束を交わしたのだった…………「あの空はあの子のもの……帰りましょう 邪魔しちゃいけない」


Nikonでグッドバイ」
ベトナム戦争中、家族を日本人戦場カメラマンによって殺された少女。やがて兵士として成長した彼女は、戦争終結後、東京へ、ベトナム難民の一人としてやって来る。目的は、ただ一つ。復讐のため………………「ええ……ずいぶん昔の悲しい記念……」


「岸辺の氾濫」
ドニエプル川を渡河し撤退しようとする敗残ドイツ軍部隊。彼はその岸辺の混乱と悲惨の中で、独り、自身の過去の中に沈潜していく………………「時には「死」を演じ「生」を唄い、そして「愛」や「嫉妬」までも語る姉を通して僕はそのすべてを描きあげることが出来た」


ベイルートからの挨拶」
レバノン西ベイルートスンニ派ゲリラの傭兵として戦った彼女は、八年ぶりに祖国日本の土を踏んだ。東京において、ある「命令」を履行するために……………「そうこうするうちに私たちの周りには血の匂う「お客」がつきまとうようになった 奴らの依頼人は誰だ?ドルーズ派シーア派イスラエルか?」


「夢見る爆弾倉」
(SAC戦略空軍のB52爆撃機に搭載された核弾頭付の新型ALCMに連続して起きるトラブル。それは機械的原因か、人為的原因か、それとも……………「さあ!連れ出してちょうだい!それはあなたたちの義務だわ」


「TOKYO RAIDERS AT 1986」
(1986年4月16日、日本の経済侵略に対する制裁として、アメリカは三機のB25を、偽装したタンカーから発進させ、東京空襲を実行させることにした。その機の搭乗員は、すべて女性だけで構成されていた………………「まだ信じられないなんて言わないことよ 本当に私たちは東京を空襲するんだから」